春のやわらかな風が吹く紀ノ川沿い。澄んだ空の下、小学5年生たちが熱気あふれる実習に挑んでいた。
テーマは「和歌山の特産品を使ったおにぎり作り」。
和歌山の恵みをぎゅっと詰め込んだおにぎり。
その具材には、当店が提供した梅干しをはじめ、マグロ、醤油、備長炭、かつお節などが並ぶ。
子どもたちは、それぞれの食材の背景や特徴を学び、どんな組み合わせが一番おいしいのか、試行錯誤を重ねてきた。
「ぜひ子どもたちの発表を見に来てください!」と先生から声をかけてもらい、車を走らせること1時間。着いた先には、ワクワクした表情の子どもたちと、どこか誇らしげな先生方が待っていた。

各チームの発表時間になり、会場は活気が満ち、子どもたちの弾ける声が響く。
「この梅干し、すっぱさがクセになるんです!」 「かつお節と合わせると、うまみが爆発するんですよ!」

目を輝かせながら、一生懸命説明する姿に、心がぐっと掴まれる。
驚かされたのは、そのプレゼンテーションの完成度。

小学生とは思えないほど論理的で、要点がしっかり整理されていた。
食材の特性や組み合わせの工夫、試食を通じた感想まで、すべてが筋の通った説明。彼らはただ学ぶだけでなく、考え、伝える力をしっかりと身につけ発表していた。

そして、最も印象的だったのは、自分たちが握ったおにぎりを来場者へふるまう瞬間だった。
「いただきます!」
一口食べた人の表情がふわっと緩み、「おいしい!」の声が次々と上がる。そのたびに、子どもたちの顔もパッと明るくなり、嬉しさがはじける。

ただの社会実習じゃない。これは、食を通じた「伝える喜び」。
さらに、発表では梅干しの味ごとの違いを動画で紹介。
すっぱさに思わず顔をしかめたり、甘みのある梅干しを食べて「これ好き!」と笑顔を見せたり
そのリアルな反応こそが、梅干しの魅力を何よりも雄弁に語っていた。

食べることは、ただのお腹を満たすためだけではない。
味わい、語らい、笑い合う。そんな豊かな時間が、そこにはあった。
子どもたちの学びは、私たち大人にも新たな気づきをくれる。
「食べることは、人をつなぎ、心を動かす。」
和歌山の梅を通じて、私たちもそんな感動をもっと届けていきたいと思った日であった。